南極の展示に向き合った32年間の挑戦とこだわり
公益財団法人 名古屋みなと振興財団
名古屋港水族館の特別展
名古屋港ガーデンふ頭に位置する名古屋港水族館(管理運営:公益財団法人 名古屋みなと振興財団)は、北館と南館の2つの建物から成り、約500種50,000匹もの生き物に出会える日本最大級の水族館です。
当館では毎年、「名古屋港の生きもの」、「寿司」、「危険な生き物」、「生きものの体色や模様」など様々なテーマの特別展を開催してきました。
ミネラルと香りが豊富。花束みたいなバスソルト。
デジタル化の進んだ現代社会は、仕事やちょっとした隙間に使うスマートフォンなどで疲れてしまいがち。易疲労状態に陥りやすい日々の生活の中で、疲れを癒せるところといえば毎日のバスタイムです。最近ではサウナ・岩盤浴・温泉などの、身体を温め、ほぐすセルフケアに注目が集まっています。内側からしっかり健康になれると、サウナ通いをしている方も増えましたよね。しかしながら毎日サウナに通えない方も多く、日々の自宅ケアが重要になってきます。湯船に浸かることで身体が温まり、リラックス効果を得られます。さらに皮膚の毛細血管が広がり、血流をよくしてくれることで新陳代謝が高まり、体の老廃物や疲労物質が取り除かれます。
男の隠れ家PREMIUM ”国際コーヒーの日” ハッシュタグキャンペーン開催
「国際コーヒーの日」は、貿易における公平性を高めるフェアトレードコーヒーの普及を促進し、コーヒーへの造詣を深めるための日でもあります。コーヒーについての知識を得ると、普段何気なくそばにあるコーヒーの美味しさもひとしおです。そんな「国際コーヒーの日」にちなんで、男の隠れ家PREMIUMでは「国際コーヒーの日ハッシュタグキャンペーン」を開催します。
この秋開催する特別展のテーマは「南極」。「南極」をテーマとする特別展の開催は30年ぶり2回目です。「なぜ」「今」南極をテーマに特別展を開催するのか、当館が開館当初から力を入れてきた「南極」の展示について、特別展開催を前にご紹介します。
過去に開催した特別展の様子
名古屋港水族館の南館は「南極への旅」をテーマに
名古屋港水族館は、南館と北館でそれぞれ明確な展示テーマを持っています。北館は鯨類とその進化の歴史をテーマに、シャチやイルカ、ベルーガを展示しています。
一方の南館のテーマは「南極への旅」。ガーデンふ頭にはかつて南極地域観測を支えた日本初の砕氷船「南極観測船ふじ」が係留されていることから、このふじの航路を辿る地球を縦断する旅の中で出会う生き物たちを、その生息環境とともに紹介することをテーマに掲げました。
名古屋港ガーデンふ頭(左上が名古屋港水族館で、右下にあるのが南極観測船ふじ)
南極への旅の終着点は、もちろん南極。南極の生き物と言えば、真っ先に思い浮かぶのはペンギンではないでしょうか。95%以上を厚い氷床に覆われた南極大陸では、生き物の種類が少なく、種類ごとの個体が非常に多い「南極生態系」と呼ばれる独特な生き物たちの世界が広がっており、さまざまな生き物がたくましく暮らしています。
「南極の海」エリア
当館の「南極の海」エリアの展示では、南極やその周辺に生息する4種類のペンギンの他、南極海に生息する魚類や、ナンキョクオキアミなどの無脊椎動物を紹介しています。
特にナンキョクオキアミは飼育が大変難しく、常設の展示は世界中の水族館で唯一(※2024年8月、自社調べ。)のものです。南極生態系における鍵種と言われるナンキョクオキアミの展示は、南極の自然環境や生命について、より多くの人に感じてもらうために不可欠だという思いのもと、開館当初からこだわり力を注いできた展示です(※Hirano, Y., and Matsuda, T. (2003) ANTARCTIC KRILL BREEDING FACILITIES AT PORT OF NAGOYA PUBLIC AQUARIUM. Mar. Fresh. Behav. Physiol., 36, 249-258)。
展示生物(左:エンペラーペンギン、右:ナンキョクオキアミ)
ここからは、南極の魚類や無脊椎動物の飼育・展示について焦点を当てていきます。
オープン当時、飼育係は自ら南極へ
名古屋港水族館では、1991年から97年にかけて計5回、サウスシェトランド諸島キングジョージ島において、飼育係による南極調査を実施しました。目的は生き物の生息状況の観察と、飼育する生き物の採集です。自然界での生き物の観察は飼育係にとって非常に重要で、飼育のための様々な情報を得ることができます。
採集方法は、潮間帯での採集、浅い海域での潜水採集、水深30~70mでのトラップによる採集です。調査を重ねるなかで、冬期の水温や氷など物理的な影響で、水深20mより浅いところで生息している生物が限られること、水深20mより深いところでは生物が驚くほど豊富なことが分かりました。
トラップ採集の様子
また回によっては、ヒョウアザラシ(肉食のアザラシでペンギンや他のアザラシの幼獣を食べたりする。ダイバーが襲われた例もあり危険。)の出現により、潜水採集が出来なくなってしまい、トラップ採集に切り替えたところ、水深50m以深に仕掛けたトラップで、潜水採集ではまれにしか見られなかったクモヒトデや、イソギンチャクを乗せた巻貝などが採集できました。
ちなみにトラップ採集で採集できたシワヒモムシという生き物は現在も健在であり、当館で最も長く飼育されている生き物となりました(2019年には「へんないきもの大王タイトルマッチ」に参加し、一躍脚光を浴びたことも)。
ヒョウアザラシ(左)と採集した生き物(中央:ヒトデ類や貝類、右:シワヒモムシ)
沖合に生息するナンキョクオキアミは自家採集が不可能なため、水産庁調査船「開洋丸」の調査航海で採集されたものや、オーストラリア南極局で実験用に飼育しているものを送っていただきました。
「飼育は不可能」と言われてきたナンキョクオキアミ。試行錯誤と工夫で長期飼育に成功
生き物を入手できたらおしまいではありません。健康的に飼育するためにも様々な工夫が必要でした。南極の生き物は飼育例が少ないため、マニュアルのようなものはありません。飼育環境を整える設備からエサまで、全て試行錯誤を行う中で、3つのポイントを見出しました。
① 飼育水のろ過循環
南極の生き物たちを生活する環境は、0℃近い低水温です。特にナンキョクオキアミは大変デリケートで、「飼育は不可能」と言われてきた生き物です。飼育のためには何よりも水質を整えることに気を使います。
普通の水槽では、バクテリアが水を浄化してくれますが、オキアミを始めとした南極の生き物の水槽の水温はバクテリアの活動が著しく低下し、浄化が追いつかないほど低くなっています。このため、名古屋港水族館では、循環水の一部をろ過バクテリアが効率よく働き、かつ飼育水温に与える影響を最小下にするため10℃に設定された循環系に引き込んでろ過を行い、再び0℃の循環系に戻すことで水質を維持し、極低水温下に生息する生き物を長期飼育することに成功しました。
② エサの工夫
特にナンキョクオキアミについては、エサについても試行錯誤がありました。オキアミは植物プランクトンを主に食べていますが、元気に育てるには動物性タンパク質も必要です。
当時の飼育担当者の直感によりたどり着いたのはアサリのミンチ。栄養価の高いエサを与えることができるようになり、オキアミの長期飼育につながりました。
ナンキョクオキアミへエサを与えるところ(この部屋は室温約0℃になっている)
③ 照明の工夫
もう一つの壁は明るさでした。南極海に生息するオキアミは、暗い環境下で飼育することが基本とされてきました。しかし、水質の安定、栄養価の高いエサのおかげで飼育状態が良くなると、光をあててもそれほど影響がないことが分かりました。
さらに、南極の日照時間に合わせた照明時間の長さなどを工夫し、明るい時間と暗い時間のサイクルを作ることで成熟することが分かりました。
これらの飼育の工夫を重ねた結果、2000年に世界で初めて(※Hirano, Y., Matsuda, T. and Kawaguchi, S. (2003) BREEDING ANTARCTIC KRILL IN CAPTIVITY. Mar. Fresh. Behav. Physiol., 36, 259-269)ナンキョクオキアミの繁殖に成功し、以降継代飼育を続けています。オキアミの他にも魚類2種、無脊椎動物5種の繁殖に成功しました。
繁殖に成功した生き物(左:イエローベリーロックコッド、中央:アンタークティックスパイニープラウンダー、右:ナンキョクバイ)
長期飼育や繁殖の成功により飼育展示を継続することはできましたが、一方でキングジョージ島での自家採集は97年を最後に実現できなくなってしまい、新たな生き物の搬入は難しい状況に陥りました。
新たな生き物の搬入へ
2019年に第60次南極地域観測隊のご協力を得て、初めて昭和基地で採集された魚類(ショウワギス・キバゴチ)を搬入することが出来ました。
搬入したショウワギス(左)とキバゴチ(右)
この時はペンギンの研究でお世話になっている方が観測隊に参加されたこと、また昭和基地周辺の魚の研究チームがあったことから、採集と南極観測船「しらせ」がシドニーに帰港するまでの輸送を隊員の方々にご協力いただけたことにより実現することが出来ました。
さらにこの時のご縁から、南極の生物の飼育担当をしている飼育係が、魚の研究チームの一人として、2023年の第65次南極地域観測隊に参加することに。昭和基地周辺の魚の生活について現地で観察や調査する機会を得ることが出来ました。
第65次南極地域観測隊参加時の活動中の様子(オレンジのジャケットを着ている隊員が名古屋港水族館の飼育係)
また、水族館職員が隊員として参加し、所属している館が南極の魚を飼育展示する施設と技術を持ち合わせていること、展示することによって、多くの人に南極の生き物について知ってもらえる機会ができることから、採集した魚の一部を日本へ搬入するという特別な許可が下りました。
魚たちは南極観測船「しらせ」でオーストラリアのフリーマントルまで運ばれ、そこからは飛行機で名古屋まで、約2か月の長旅を経て、2024年3月に名古屋港水族館へやってきました。新たに搬入された魚は、ショウワギス、ボウズハゲギス、メガネカモグチウオなど計6種。ボウズハゲギスは名古屋港水族館では初、メガネカモグチウオは日本で初めて(※自社調べ。2024年8月、国内の水族館において)搬入される生き物です。
搬入された生き物たち(左:ボウズハゲギス、右:メガネカモグチウオ)
搬入から夏の間はバックヤードで飼育し、長旅の疲れを取り、体力を回復させました。
南極の大自然と生き物を紹介!特別展「飼育係、南極へ行く」開催
日本初(※自社調べ。2024年8月、国内の水族館において)の展示となるメガネカモグチウオをはじめ、今回搬入された生き物を展示・紹介する特別展「飼育係、南極へ行く」が10月12日からスタートします。南極地域観測隊に参加した飼育係が撮影した南極の風景の展示の他、昭和基地で採集した魚類や所属した魚の研究チームの活動の紹介も行います。
普段の生活の中で南極を身近に感じることはなかなかありません。しかし名古屋港水族館の目の前に広がる海は遥か南極までつながっています。そこには私たちの想像を超える雄大な自然と生命の営みがあるのでしょう。
「地球には様々な環境があり、それぞれの環境に適応したくましく生きる生命を紹介する」、開館当初に掲げたテーマをもとに、飼育係自身が感じた南極の自然の大きさや生き物の不思議を、より多くの人に感じてもらえるよう、南極エリアの展示に力を注いできました。そしてこれからも「南極」という極限の世界に生きる生命に向き合い続けていきます。
【特別展に関するプレスリリース】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000079997.html
【公式】名古屋港水族館ホームページ
https://nagoyaaqua.jp/