2024年6月18日 15時20分 有限会社知内温泉旅館
▼温泉とサウナを融合させた唯一無二のサウナを作りたい。一人のサウナーとの出会い。
1247年に開湯した知内温泉は、北海道知内町で脈々と続く温泉と歴史を長年守り続ける旅館です。ある日、湯守の佐藤はサウナの魅力に惹かれ、テントサウナの試験的導入を実施。根底にある温泉文化の普及という理念のもと、日々新しい挑戦を続けてきました。
テントサウナを繰り返すなか、より素晴らしいサウナ体験ができる施設の可能性を模索しました。そんな時、2022年に1人のサウナ研究家と出会いました。フィンランド政府観光局公認アンバサダーであり、国内サウナブームを牽引する草彅 洋平氏(CULTURE SAUNA TEAM “AMAMI”)との出会いです。
これをきっかけに知内温泉サウナプロジェクトは動き出しました。しかし、完成までの道のりは決して平坦ではありませんでした。これは、北海道最古の温泉が新たな一歩を踏み出すストーリーです。
▼サウナづくりで資金面やデザイン面で多くの課題が。草彅氏と協力して試行錯誤
知内温泉は、北海道最古の温泉地として800年の歴史を誇ります。豊富な湯量を誇る5本の源泉があり、すべて源泉掛け流し。湯治にも利用され、美肌の湯として知られる「上の湯」、肩こりや腰痛、怪我に効能のある 「下の湯」、そして「下の湯」と同じ成分を持つ露天風呂「星見の湯」(現在、完全予約貸切制)と豊富な源泉数も魅力です。
上の湯:明礬(ミョウバン)泉
下の湯:高濃度の鉄分泉
貸切り露天風呂:「星見の湯」
多くの方に温泉の素晴らしさを知っていただきたく、老朽化した設備の整備のため50年ぶりのリニューアルを行い、 新しい風を吹き込みながら古き良き歴史も残しつつ、この湯を絶やさぬために努めてきました。 そんな中、私はサウナに出会い「ととのい」という概念を知りました。敷地内の広大な自然の中にテントサウナを導入したところ、この大自然サウナはサウナブームと重なったこともあり、大好評を博しました。
そして知内温泉に来てくれた多くのサウナーたちとの出会いを通じて、ある一つの想いが生まれました。それは温泉とサウナを融合させた知内温泉だから こそできる唯一無二のサウナを作りたいという想い。
2022年 ある1人のサウナーと出会います。それは『日本サウナ史』の著者であり、サウナ研究家の草彅 洋平氏。800年の歴史に新たな歯車が加わり動き出した瞬間でした。彼と出会い、サウナの真髄を教わり、多くのアイデアをもらいました。
最初にサウナシーンの現状を知るために、全国のサウナを巡る旅に出ました。一言にサウナといっても、それぞれのサウナ施設に独自の個性があり、そこでしか味わえない体験は感動の連続でした。
やるからには二番煎じのサウナは作りたくない。 草彅 洋平氏と話し合いを何度も何度も重ね、知内温泉の豊富な湯量と源泉成分、広大な自然を生かしたサウナを作ることをテーマにしました。
しかし、サウナ作りは多くの困難が。まず、資金面での課題がありました。目指すサウナを現実にする場合どれくらいかかるものなのか見当もつきません。なかなか一歩踏み出せずに時が経ち困っていた時に、ダメもとで諦めていた事業再構築補助金が通ったとの連絡が。 また今回のサウナプロジェクトの宣伝も兼ねてクラウドファンディングもやってみると、700万円に近いお金が集まりました。
場所やデザイン に関しても多くの苦労がありました。知内温泉は過去に火事などで増改築を重ねており、新館や旧館のテイストの統一が課題でした。そこで草彅氏からの紹介で、CULTURE SAUNA TEAM “AMAMI”メンバーであり、建築家のMORIYA AND PARTNERS代表の森屋 隆洋氏に相談することに。森屋氏は知内温泉の歴史とコンセプトに沿った自然を生かしたデザインを完成させました。
▼予算の超過、スケジュールの遅れなど不安な日々の中、見えてきた完成
設計が完了した後、理想のサウナを追求した結果、費用は当初の予算の倍近くに達しました。急遽規格変更を行い、 規模を縮小しましたが、それでも多額の費用がかかります。さらに、設計の難しさやタイトなスケジュールもあり、施工業者もなかなか見つかりません。工事が遅れる中、平野建業が手を挙げてくれたことで、2023年12月 知内温泉サウナプロジェクトを走り出すことができました。
ですが知内温泉の位置する知内町湯の里地域は町内でも大変雪の多い地域。大雪に見舞われ、基礎工事が大幅に遅れていきます。タイトなスケジュールは融資面も障壁となり、融資の打診が進まず、4ヶ月以上をやきもきして過ごしました。
8月から3月までの期間は、とても生きた心地がしませんでしたが、無事に工事は進み、骨格を組み、外壁やサウナ室ができ、ようやく完成が見えてきました。
▼ハイブリッドサウナがついに完成。これからも、特別な体験の提供をお客様へ
扉を開けて最初に目に入る光景、ようこそ呼吸の間へ
中央には1.3mの立ち湯を設置
サウナ室内に流れる源泉、驚くべきはその豊富な湯量と泉質
2024年6月 サウナは無事に完成しました。私たちができる限りの最高の【温泉×サウナ=ハイブリッドサウナ】を実現できたと自負しています。6月22日オープンに向けて、より良いサウナ体験を提供するためにグッズやサ飯(サウナ飯)、オペレーションなど細部にも注力しています。
提供予定のサウナ飯、ととのいドリンク
今後も温泉文化の普及に力を入れ、このハイブリッドサウナの魅力を広めていきたいと思います。未だかつてないサウナ 体験をぜひご堪能ください。サウナを通じて、より多くの方に温泉の良さを知っていただけたら嬉しいです。 この新たな挑戦を通じて、私たちは知内温泉の伝統と革新を融合させることで、訪れる皆様にとって特別な体験を提供し続けます。温泉とサウナが織りなす癒しのひとときを、どうぞお楽しみください。