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小さな秘密基地を造る裏技。

秘密基地”と聞いてワクワクするのは子供ばかりではない。大人だってそれは同様だ。ただ大人の場合は、日々の生活の中でそれが「ホッとする」場所になるということ。心身共にリセットして明日からまた頑張ろうといった活力も湧いてくる。そして“秘密基地”は小さい方が良い。ジャストフィットな心地良さに身を委ねてみたい。


1. マンションの限られたスペースに造った中2階ロフト風の小さな「こもり部屋」

東京都 日髙邸


63㎡の2LDKのスペースを全てスケルトン状態にして1LDKに変更。左端が“通り庭”。


玄関扉を開けて足を踏み入れると、まずはマンションとは思えない土間空間に驚かされる。さらに足元照明に導かれるように奥へと続く〝通り庭〞風の廊下。

「京都の町家や通り庭の雰囲気が好きなので、その要素を取り入れたいとデザイナーに相談したんです。ほかにもリノベーションだからこそ実現できたオリジナルの工夫が色々あります」と話す日髙佳祐さん。

黒壁のほの暗い〝通り庭〞を抜けて広がるのは明るいリビングダイング。そこは、訪れるゲスト誰もが思わず声を上げてしまう開放感と空気感に包まれている。アカシアの無垢材の床やカウンターキッチン、そしてリビング横にはロフトを造りつけた壁のない寝室ゾーン。実はこの中空に設置された上段のロフトこそが日髙さんの小さな秘密基地なのだ。

一見すると収納スペースのようだが、部屋としての機能を重視し、座ってくつろげるよう天井の高さも考慮。本棚を設置して好きな本をずらりと並べ、ここで読書に耽る時間が何より楽しいと日髙さんは笑顔を見せる。時に飼い猫が寄り添ってゴロリと昼寝をするのも至福のひと時。キッチンに立つ奥さんともすぐに目線を合わせられる距離感も悪くないという。ちなみに愛猫が駆け巡れるようキャットウォークの造りも部屋の随所に施されている。また、ロフト下段のベッドスペースは、リビングよりも床を一段下げてやや深さを持たせた空間に。

「洞窟のようにこもれる感じがとても心地良いんですよ(笑)」1LDKの空間はあえて壁などで仕切っていない。しかしそこには、こもる感覚の秘密の場所と、温かな家族の一体感が共存している。


2. LDKの片隅の小さなスペースに造った趣味の“モノ”であふれるワークスペース

東京都 松丸邸


キッチンカウンター越しに見たワークスペース。右側は趣味のコーナー、左側は仕事用のパソコンコーナー。狭い空間を上手く利用。


扉を開けた瞬間、どこかのショップ(!?)に迷い込んだかと錯覚するほどのインパクト。古いマンションの外観からは想像できない、ポップで存在感のある空間がそこに広がっていた。

念願の土間空間にしたエントランスには、自転車やフィギュア、カラフルなスニーカーなどがずらり。お気に入りのモノを飾るためだけに棚を造り、ガラスケースなどを設置したというが、そのディスプレイセンスは見事だ。

そしてそのワクワク感はさらに部屋の中へと続いていき、パソコンを設置したワークスペースにも彩られている。カウンターキッチンの向かいに造ったそこは、仕事と趣味を楽しむ松丸さんのとっておきの秘密基地。90㎝四方のパソコンスペースは体の大きな松丸さんにはちょっと狭そうだが、「座るとなぜか収まりが良くて妙に落ち着くんですよね」と笑顔を見せる。右隣にも机と棚を置き、フィギュアやけん玉コレクションの指定席に。古いパソコンはインテリアのひとつだという。

実はこのワークスペースは、浴室とウォークインクローゼットの間を利用したデッドスペース。2つに区切られ、しかも奥行きに段差があるのは構造上の問題なのだ。「でも、この小さな空間の集まりが遊び心をくすぐり、フィギュアなどを飾るにはもってこいなんですよ」


3. ひとりの時間をゆっくり楽しむための大人の雰囲気に満ちた静かな隠れ家

東京都 T.O 邸


小さな窓を南北面に設けたことで、明るさを確保すると同時に入ってくる光も部屋の演出にひと役買っている。


築43年の古い二世帯住宅の建て替えに伴い、一部を切り離したことでスペースが空き、その空間を利用して隠れ家的なミニ書斎を造ることができたT.Oさん。設計会社にお願いしたのが「書斎として利用するためにカウンターデスクや本棚、ロフトへの階段など、部屋の統一感を出してほしい」ということだった。さらに、古さと新しい素材を上手く溶け込ませるために塗装には特にこだわったのだと言う。そのため、壁の色は何度もやり直し、ようやく写真に写る深みのあるブルーに落ち着いた。

ただし、2世帯住宅を分けたことで理想の個人的スペースを確保できたのは良いのだが、収納スペースが母屋側にあったため、それがほぼ無くなってしまった。そこでこの書斎スペースにロフトを設けて一部を収納スペースに割くことにした。おかげでロフトにテレビを置き、趣味の写真をモニターできるスペースも確保できた。

「その際に天井を抜いて露わになった古い梁を活かし、机や本棚、ロフトへの階段も着色して古民家風な雰囲気を出しました」とT.Oさん。ざっくりとした素材感のある雰囲気が好みだったので、床にはウォルナットの無垢材を使用し、カウンターデスクと本棚も床材と統一した仕上げで隠れ家的な空間を目指した。「落ち着けるスペース、非常に快適な空間になりました」。


4. ガレージ奥のスペースを仲間との語らいの空間に

埼玉県 中島邸


ガレージの奥の小さな空間が秘密の隠れ家スペース。


のどかな田園風景の中に突如現れるアーリーアメリカンな一戸建て。大工でもある中島一弥さんが自ら手がけた秘密基地は、そのガレージの奥にある。「とにかく車とバイクが大好きで、愛車たちを眺めながらくつろげる場所が欲しかったんです。ホントは自分だけの密かな楽しみのスペースにしようと思ったんですが、仲間たちが集まることも多く、共通の話で盛り上がる語らいの場にもなってますね(笑)」と中島さん。

ブルーグレーの木の壁がお洒落な2畳ほどのスペース。真ん中にアンティーク調のストーブを設置し、それを囲むように枡形のウッドテーブルを配した。そして折りたたみ式チェアやランタン、お気に入りのアメリカ雑貨などをセンス良くディスプレイ。居心地は良さそうだ。

「キャンプのように火を囲む雰囲気ですね。ここでコーヒーを飲みながら車と共に過ごすのが何より至福の時間なんです」と話す。愛車はボルボ240 、エルカミーノ、ワーゲンバス、ハイラックスキャンピングカーなど6台。バイクはハーレー、アイアンショベルX L C H 、エボリューションなど6台を所有する。「車ありき、ガレージありきで造ったまさに趣味の秘密基地です」


5. 趣味に没頭するための空間造りにクールなメタル素材の仕切りが活躍

神奈川県 Yoshiki邸


エキスパンドメタルの仕切りを施した、アメリカの倉庫街を思わせるクールな雰囲気のワークスペース。空間を広く見せるだけでなく風通しもいいのが特徴。仕事や読書をするなどはもちろん、趣味のDIYなどの作業もここで楽しんでいる。


二ューヨークのアパルトマンを思わせるクールなインテリア。まさに男の秘密基地というイメージにふさわしいこの収納&ミニ書斎は、網の目が美しいエキスパンドメタルの仕切りを設置したことで、自分の理想の形を実現した。

玄関からネイビーブルーの中扉を開けてリビングダイニングへ。この小さな秘密基地は扉のすぐ右手にある。ほぼスケルトンの状態から室内全体をリノベーション。最初はこの部分には何も造らず、可動式のクローゼットを自分でD I Y しようと考えていたというYoshikiさん。「空間を自由に使えるようにと思ったんですが、ちょっと洒落た遊び心を加えたくて、見せる収納プラス書斎ができないかと設計士さんに相談したんです」と語る。

ガラスで仕切る部屋などを設計士に提案してみたものの、ガラスに人が映り込むのが気になる、収納が丸見えになる......などの理由で不採用に。結果、勧められたのが圧迫感のないエキスパンドメタルだった。この素材は風通しも良く、適度に目隠しになる。明るさも確保できるので狭い部屋にはもってこいだった。

「見た目の格好良さも気に入りましたね。それに合わせて内部は自分でデスクや棚板をDIYで設置。余っていたリビングの床材を使いましたが、簡単に交換できるようにしたので作業するのにも楽です」収納は天井いっぱいまで使えるように工夫した。見せる収納を意識して、キャンプ道具や雑誌などがきっちりと収まっている。

「この空間に合うよう椅子にもこだわり、欲しかったジロフレックスを購入しました。見た目の良さはもちろん、座り心地が抜群。いつまでもこの場所にこもっていたくなる理由はこれにもあります(笑)」



※こちらは男の隠れ家2018年3月号より一部抜粋しております