バイクに乗ってみませんか? -上州〜信州・志賀高原-
緑に囲まれたワインディングロードを軽やかに駆け抜ければ、ひと筋の道が遠くまで延びる高原ロードが目の前に。さあ、自分の時間を求めて上州から信州に続く快適な道を走ろう。
バイクの醍醐味は爽やかな風に当たることだ
関越自動車道から上信越自動車道へとハンドルを切り、「松井田妙義IC」で高速を降りた。国道18号・中山道に入ると信越本線の「横川駅」はすぐ。横川駅といえば「峠の釜めし」。長野新幹線が開通するまでは、横川駅に長距離列車が着く度、乗客は駅弁の売り子から、峠の釜めしを買い求めていたというほどの名物。新幹線開通に伴い横川駅の先は廃止され、駅弁の売り子がホームに立つことはなくなったが、今は駅前本店やドライブイン、高速のSAなどで売られている。昼食には少し早いがここでこの名物を食べない手はない。腹を満たすことでまだ先の長いツーリングに備えることにしよう。
連続するカーブを抜けて、道はいよいよ高原へ向かう
道はいつの間にか平坦となり軽井沢の町に出た。観光客で賑わう町を抜け、浅間山の麓を整備された爽快な道が走る鬼押ハイウェーへ。道の両脇に明るい林が続く緑のトンネルをしばらく走ると左手に茶褐色の浅間山の姿が浮かぶ。ちょうど浅間山の展望を目的としたような浅間六里ヶ原休憩所が右手にあったので、しばし休息。目の前に迫る雄大な活火山をのんびりと眺めることにした。
再び走り始め、いったん高原の道からJR吾妻線が走る嬬恋村まで下りてきた。とたんに体に感じる風は熱気を帯びてきた。熱風から逃れるように万座温泉方面に向かう万座ハイウェーに入り高地を目指す。力強いエンジンはドドドドッという鼓動と共に標高をどんどん稼いでいく。クルーザータイプなのだが、バンク角は意外に深く、ステップをすることもなく安定したコーナリングでカーブをクリアしていく。トルクフルなエンジンは頻繁なギアチェンジを必要としないのでとても楽だ。
急勾配の九十九折りの道を走ること約30分。ヘルメット越しに硫黄の香りが鼻をくすぐると、そこは万座温泉だ。この辺りから道の周囲の木々が低くなり、ハイマツが目立つようになった。見通しが良くなり、下を覗くと今まで走ってきた道が遠くからうねうねとカーブを描いている様子が見える。草津温泉方面から延びる国道292号線と合流すると道は比較的なだらかになり、見晴らしの良い高原道路となった。この通称「志賀草津高原ルート」はどこまでも走りたくなるような道だ。ちなみに草津温泉方面からこの合流点までは白根山の火山活動の影響で通行止めになっているので注意したい。しばらく走ると道の右側に「日本国道最高地点」の標識が目に入った。ここは標高2172mの渋峠だ。バイクを停め、そこからの景色に目をやると、ラムサール条約に登録されている芳ヶ平湿地群や赤茶色の白根山が見える大展望が広がっていた。
そろそろお腹もすいてきたなと感じる頃、横手山ドライブインに到着。志賀草津高原ルートの長野県渋温泉方面の景色が見える2階のレストランで「ライダーズランチ(1500円)」をオーダーして、窓際に腰を下ろした。目の前には視界を占める志賀高原のパノラマが広がっている。
宿へ向かう道も選んで高原をつなぐ道を
ほどなく猿が温泉に入ることで有名な地獄谷野猿公苑に。ひと休みするのに格好の「猿座カフェ」があった。自分のバイクを目の前に、風の吹き抜けるテラスで一服。他のテーブルは外国人観光客ばかりだ。カフェのスタッフが「この先にツーリングライダーが集まる蕎麦屋があるのよ」と教えてくれたので訪ねてみることに。カフェからすぐ、国道292号線沿いにその「そば禄」はあった。ここの特徴は蕎麦を注文すれば天ぷらが食べ放題。ご飯も食べ放題なので蕎麦を食べ終わったら天丼にして腹を満たす強者もいるらしい。
お腹もいっぱいになって後は今宵の宿を目指すのみ。国道292号線をそのまま進み、信州中野で403号線へ。美術館やフルーツで有名な小布施、蔵造りの町家が連なる須坂を通り、ラグビーの夏合宿をしているグランドの合間にキャベツ畑が広がる菅平高原を経て、「休暇村嬬恋鹿沢」へ着いたのは熱気も収まった夕暮れだった。
翌朝、疲れも残らずすっきり目覚めた。昨夜たっぷり浸かった温泉のおかげかもしれない。今日の予定は特に決めていない。のんびりと気持ちの良い高原道路を走って昼寝して帰ろうかな、ぐらいの気持ちだ。小諸へ出て、八ヶ岳の東麓をJR小海線沿いに国道141号線を南下して小淵沢に出るのも良し、途中から国道299号線を麦草峠に向かうも良しだ。麦草峠は昨日の渋峠に続いて国道の標高では2番目の高さ(2120m)だ。高原道路を走るコースは色々と設定できて楽しい。
さあ出発だ。国道144号線に戻り、東へ向かう。昨日の爽快感をもう一度味わうために、鬼押ハイウェーに出て北軽井沢などを流して帰路につくことに決めた。
※こちらは男の隠れ家2018年9月号より一部抜粋しております