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紅葉の不思議 人と差が付く豆知識



色彩豊かに山々を染め上げる日本の紅葉。その姿の美しさは外国人からも人気を得ている。そんな紅葉にまつわる豆知識を紹介しよう。


いつから紅葉(こうよう)は愛されて誰が紅葉(もみじ)と名付けたの?


日本の四季。それぞれの季節を代表する光景を思い浮かべてみる。パッと咲いて儚く散る桜。競い合うように鳴くセミの声。山々を赤く染める紅葉。しんしんと降り積もる雪。南北に長い列島は、南から桜が舞い始め、北から紅葉が色づき始める。いま日本列島では、カエデを中心とした木々たちが、紅や黄色に山を染め始めているのである。


ところで紅葉には「こうよう」と「もみじ」のふたつの読み方がある。その違いをご存知だろうか。一般的に「こうよう」は冬に備えて落葉する前に、紅や黄色に葉の色が変わることを指す。これに対して「もみじ」は「こうよう」の状態の中でも、ひときわ紅く染まったカエデ科の樹木を総称する言葉である。


ちなみに植物の分類上、モミジという科や属は存在しない。モミジと呼ばれる木は全てカエデ科に属する。ただ、園芸や盆栽の世界では、葉の切れ込みの数や具合によって区別するため、葉が5つ以上に切れ込み、子供の手のような形状のものを「モミジ」と呼び、切れ込みが3つのものを「カエデ」と呼んだりする。また「もみじ」の語源を紐解くと、紅や黄色の草木の葉が変化していくさまを「もみつ」と呼んでいたことから始まる。


この連用形で名詞化したものが「もみち」。やがて平安時代に入ると「もみぢ」と濁音化されていった。そもそも紅葉する落葉広葉樹は、北半球の温帯地域にしか存在しないといわれている。東アジアや一部のヨーロッパ、北アメリカ東部やカナダなどで紅葉が見られるが、ほとんどの地域はイチョウなどの葉が黄色に色づく黄葉がメインだ。


現在、日本には26種のカエデ科に属する樹木が存在しており、世界のどの地域よりも多い。それらの樹木がそれぞれに、赤や黄色、オレンジ色に葉を染めていき、混じり合った色彩は日本独自の美しさを形成する。


そんな日本で紅葉が愛でられるようになったきっかけは、平安時代初期にさかのぼる。平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した藤原定家がまとめた小倉百人一首は、恋の歌が43首と最多であるが、四季について歌った句は32首存在している。


その中で紅葉について歌った句は6首。その6首を残した中で最も古い時代に生きたとされる歌人・猿丸太夫は、生没年が不詳ながら平安時代初期に『古今和歌集』が選ばれた際には、すでにその存在が述べられていることから、少なくとも平安時代初期より前に生きた人物だとされている。


なお、中国からの影響が大きった奈良時代、『万葉集』に歌われた黄葉の歌は100首を超えている。このことから、奈良時代から平安時代初期にかけて、日本独自に自生するカエデ科の樹木が、紅く色づく姿が、やがて〝紅葉〞と呼ばれ、愛されていったことがわかるのだ。


教えて紅葉のメカニズム



一般的に紅葉は一日の最低気温が8℃以下の日が続くと色づき始め、5℃以下で一気

に進行するといわれている。木は気温が低下すると、根から水分を吸い上げる力が弱まり冬の間、満足に水分補給ができなくなる。そのため外に水分を放出する葉を落とし、幹の水分バランスを図るのだ。葉と幹の間で栄養素の交流がなくなると、葉では光合成が行われず葉

緑体が分解される。このため緑色に見えていた色素が失われ、その際、葉に残された色素がその樹木の紅葉の色となる。


イチョウなど黄葉する木なら、緑黄色野菜にも含まれるβ─カロチンの黄色い色素だけが残り、カエデのように紅く染まる植物の場合は、葉の老化で糖とアミノ酸を分泌し、紅色の色素・アントシアンを合成。最後に葉に残る色素は合成された紅色となるのである。


いくつ知ってる?紅葉を表す美しい言葉知っていると洒落者

知っていると洒落者!?ちょっと〝粋〞な紅葉の表現を知る


うすもみじ【薄紅葉】仲秋

緑色が残った、淡い色の紅葉。紅葉のはしり、秋の始まりを表現する言葉。深い紅の冬紅葉とは違う趣を持つ。


かきもみじ【柿紅葉】

晩秋柿の葉が紅葉し、本来の緑色に紅や黄色、茶色など様々な色が入り混じった状態の美しいさまを表現する。


かしわもみじ【柏黄葉】

晩秋カシワの葉の色づき。黄色から褐色に変化する。艶やかさはないが木が大きいため、紅葉山に彩りを添える。


こうらく【黄落】

晩秋広葉樹が黄色く色づき、落ちる姿。ケヤキやクヌギ、イチョウなど。太陽の光を浴び、落葉するさまの美しさ。


はつもみじ【初紅葉】仲秋

いち早く紅葉し秋の訪れを告げるもの。ナナカマドなどを指す。カエデはこれよりずっと遅れて紅葉が始まる。


ははそもみじ【柞紅葉】晩秋

ブナ科コナラ属の紅葉の総称。高さ15〜20mほどの雑木で、コナラ、クヌギ、オオナラなどを表現する言葉。


ふゆもみじ【冬紅葉】初冬

周りが枯れ始める中の紅葉。また、冬になってから色が際立つ、庭園や寺社などの紅葉を指すこともある。


百人一首に登場する〝紅葉〞の歌

日本人にとって最も身近なカルタ小倉百人一首から秋の歌を知る




第5番 猿丸太夫(さるまるだゆう)

古今集 四季(秋)


奥山に もみぢふみわけ なく鹿の

声きくときぞ 秋はかなしき

人里離れた山奥で紅葉を踏みながら鳴く

鹿の声を聞くと秋がさらに寂しく感じる。


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第17番 在原業平(ありわらのなりひら)

古今集 四季(秋)


ちはやぶる 神代もきかず 竜田川

からくれなゐに 水くくるとは

不思議な事が多い神代でも、聞いたことが

ない。紅葉が竜田川を真紅に染めるとは。


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第24番 菅家(かんけ)

古今集 羈旅


このたびは 幣もとりあへず 手向山

紅葉の錦 神のまにまに

この旅はお供えの用意がない。手向山の美

しい紅葉を神の御心のままお受け下さい。


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第26番 貞信公(ていしんこう)

拾遺集 雑


小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば

今ひとたびの みゆき待たなむ

小倉山の紅葉よ。もしお前に心があるなら

再び天皇の行幸まで散らずにそのままで。


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第32番 春道列樹(はるみちのつらき)

古今集 四季(秋)


山川に 風のかけたる しがらみは

流れもあへぬ 紅葉なりけり

山を流れる川の流れを止めた柵。よく見る

と流れずに溜まった紅葉の葉だったのだ。


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第69番 猿丸大夫(さるまるだゆう)

古今集 四季(秋)


嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は

竜田の川の 錦なりけり

激しい風に散らされた三室山の紅葉。竜田

川に散り水面を錦のように鮮やかに彩る。


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