大注目の国産地ウイスキー
※本記事の内容は雑誌掲載時点の情報です。
2014年後半に放送されたNHK連続テレビ小説「マッサン」。ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝と妻・リタの物語だ。その影響で空前のウイスキー・ブームに沸いてから早1年。現在のジャパニーズウイスキーの「トレンド」を探る。
ウイスキーファンを魅了する地ウイスキーとは
NHK連続テレビ小説「マッサン」の影響や、近年のハイボール人気に後押しされ、ジャパニーズウイスキーの評価の高さが広く知られるようになった。そんな中、地方の酒造メーカーが造る"地ウイスキー"が今とても元気なのである。
地ウイスキーの歴史は古く、福島県の笹の川酒造は昭和21年(1946)にウイスキーの製造免許を取得している。また鹿児島県に本社を置く本坊酒造は、戦後間もない昭和24年(1949)からマルスウイスキーの製造を開始した。
その後、昭和60年(1985)には長野県伊那郡に信州マルス蒸留所を竣工し、中央アルプスの水を活かしたウイスキー製造を開始した。
そして近年、世界中のウイスキーファンが注目しているのが、埼玉県秩父に蒸溜所を構えるベンチャーウイスキーだ。平成16年(2004)の創業で、酒造メーカーとしては若く規模も小さい会社である。しかし、この小規模蒸溜所から生み出される「イチローズモルト」は、サントリーの「山崎」や、ニッカウヰスキーの「竹鶴」と並び世界的な賞を数々と受賞。
世界五大ウイスキーと称されるジャパニーズウイスキーのブランド力を担う一翼である。ウイスキーはその製造の難しさや貯蔵に要する年月から、酒造免許を取得していても商品化を諦める酒造メーカーが多かった。日本酒や焼酎といった繊細な酒造りを得意とする日本人。その職人たちや、日本人ブレンダーが手がけるウイスキーへの期待感は高まっている。
そうした機運の高まりが後押しする形で蒸溜所を開設する動きが活発化している。輸入販売業のガイアフロー社が静岡市玉川地区に「静岡蒸溜所」を開設。2016年春の稼働開始を目指す。また同じく2016年秋の蒸溜開始を目指し、北海道厚岸町には堅展実業が「厚あっけし岸蒸溜所」を開設する予定である。早ければ2019年頃には、今までにない"新たな地ウイスキー"を味わえることだろう。
世界に誇る、ジャパニーズウイスキーの歴史
明治32年(1899) 鳥井信治郎(当時20歳)「鳥井商店」を創業。輸入ワインや缶詰を取り扱うが、商売はなかなか軌道に乗らず。
明治39年(1906) 「寿屋(ことぶきや)」に社名を変更。
明治40年(1907) 甘味料や香料をブレンドした甘味葡萄酒「赤玉ポートワイン」が誕生、人気となる。
大正7年(1918) 寿屋の従業員・竹鶴政孝がウイスキー造りを学ぶため、スコットランドへ留学。
大正12年(1923) 日本初のウイスキー蒸溜所「山崎蒸溜所」の建設が開始される。竹鶴政孝が設計を担当。
昭和4年(1929) 初の国産ウイスキー「サントリー白札」の販売を開始。「焦げ臭くて飲めない」と評判は良くなかった。
昭和5年(1930) 「サントリーウイスキー赤札」発売。昭和9年(1934) アメリカへサントリーウイスキーを初輸出。竹鶴政孝が「大日本果汁」を設立。北海道余市に「余市蒸溜所」を開設。
昭和12年(1937) 「サントリーウイスキー角瓶」発売。脇田酒造が「東洋醸造」と社名変更し「トミーウイスキー」を発売。
昭和13年(1938) ニッカアップルワインが発売開始。
昭和15年(1940) 大日本果汁が「ニッカウヰスキー」「ニッカブランデー」第1号をそれぞれ発売。
昭和20年(1945) 東洋醸造「45ウイスキー」発売。
昭和21年(1946) 寿屋から「トリスウイスキー」、大黒葡萄酒からは「オーシャンウイスキー」が発売される。
昭和27年(1952) 大日本果汁が「ニッカウヰスキー株式会社」へ社名変更。
昭和30年(1955) 大黒葡萄酒が軽井沢蒸溜所を開設。
昭和31年(1956) ブラックニッカ(特級)が誕生。
昭和38年(1963) 寿屋が「サントリー株式会社」へ社名変更。
昭和44年(1969) ニッカウヰスキーの宮城峡蒸留所が始動。
昭和48年(1973) サントリーが白州蒸溜所での製造を開始。
昭和49年(1974) キリン・シーグラムが富士御殿場蒸溜所で第一号となるウイスキー「ロバート・ブラウン」を発売。
昭和59年(1984) サントリー「シングルモルトウイスキー山崎」が誕生。
平成元年(1989) ニッカより「シングルモルト余市」「シングルモルト仙台宮城峡」が発売される。
平成13年(2001) ニッカがアサヒビール株式会社と営業統合。「シングルカスク余市10年」が「BEST OF THEBEST 2001」で最高得点を獲得。
平成16年(2004) 東亜酒造のウイスキー原酒を守った肥土(あくと)伊知郎によりベンチャーウイスキーが設立。埼玉県秩父市にて秩父蒸溜所が始動。
平成19年(2007) WWA2007で「竹鶴21年ピュアモルト」がブレンデットモルトウイスキー部門で世界最高賞。
平成17年(2005) キリンウイスキー「富士山麓シングルモルト18年」を発売。
平成22年(2010) サントリーは「アイコンズ オブ ウイスキー 2010」の世界部門で、ウイスキー ディスティラー オブ ザ イヤーを受賞。日本企業として初の快挙。
多くのメーカーはウイスキー以外に、日本酒や焼酎などの製造も手がける。一升瓶に詰められていたり、地の利や所有する設備を活かし商品化される個性豊かなウイスキーたち。これをきっかけに、気になる1本をぜひ見つけてほしい。
イチローズモルトMWR(ミズナラウッドリザーブ)6480 円( 700ml )羽生蒸留所の原酒を中心に数種類のモルトをブ㆑ンドし、ミズナラ樽で再熟成した人気商品。最初の口当たりは奥深い甘みが特徴だが、次第に複雑な味わいとピート感が口の中に広がる。
ホワイトオークレッド 2060 円( 1800ml )オーク樽で3年以上貯蔵熟成させた原酒を使用。価格の安さが魅力的でもある。ウッディなピートと、スト㆑ートなアルコールを感じさせる。ハイボールで味わうとより一層楽しめる。
ホワイトオーク 地ウイスキーあかし 1180 円( 500ml )英国産麦芽を 100% 使用したスコッチタイプのブ㆑ンデッドウイスキー。淡麗でやや辛口な味わいは、ロックやハイボールによく合う。すっきりとした飲みやすさと後味が特徴だ。
サンシャイン・ウイスキー2376 円( 1800ml )20 年以上蔵に眠っていた原酒を使用したブ㆑ンデッドウイスキー。度数は 37度と控えめながらハイボールで味わうと昔懐かしい、昭和期に親しんだ風味を感じることができる。
ザ リバイバル 2011シングルモルト駒ヶ岳1 万800 円( 700ml )1992年から蒸留を休止していたが2011年、19年ぶりに再開した。以来、バーボン樽で 3年間熟成させたモルト原酒は若々しく甘い香りで、新時代の幕開けを期待させる仕上がり。
ツイン アルプス1580 円( 750ml )蒸留所を取り囲む中央アルプスと南アルプスをデザインしたボトル。ナッツのような風味と、ウッディ香が特徴的なブ㆑ンデッドウイスキー。ロックにするとコクと甘みが際立つ。
岩井トラディション※岩井の会限定1762 円( 750ml )ジャパニーズウイスキー創生の一翼を担った岩井喜一郎氏の姓を冠する。岩井氏設計のポットスティルで蒸留した原酒をベースとし、上品な口当たりと柔らかさを味わうことができる。
マルス モルテージ 越百モルトセレクション4536 円( 700ml )ハチミツやキャラメルを連想させる甘い香りと、ほのかに感じるスモーキーフ㆑ーバー。口当たりは丸く優しい余韻を残す。中央アルプス「越百山」から越百(コスモ)と名付けられた。
チェリーウィスキーEX1188 円( 500ml )中央のチェリーウイスキーよりも原酒の混和率が高い、旧一級規格のブ㆑ンデッドウイスキー。スコッチに似た風味も感じられ、ほのかな甘さはスト㆑ートで味わうとより際立つ。
ヤマザクラ2268 円( 700ml )チェリーウイスキーの後継商品として開発された。柔らかな口当たりだが、ピート香がしっかりと感じられる。後から青リンゴの香りがついてくる、独自ブ㆑ンドらしい複雑な味わい。
チェリーウイスキー2700 円( 1800ml )1.8 リットルの一升瓶サイズ。旧二級規格で、手軽に楽しめる値段が嬉しい。ライトでスムーズな口当たりで日常的に愉しむにはちょうど良い。稀少なため見つけたら即買いしたい。
ピークウイスキーオープン価格( 720ml )昭和 50 年代から 60 年代にかけて一世を風靡した銘柄のスペシャルタイプ。シェリー樽で熟成したモルトを使用しブ㆑ンド。ほのかに香るシェリーとまろやかな旨味が格別である。
地ウイスキーを心ゆくまで愉しみたい
疲れて帰宅した夜は、自宅でじっくりと心ゆくまで地ウイスキーを味わいたい。それぞれ銘柄の特徴を活かし、自分の好みに合わせて飲み方を変更できるのがウイスキーの面白いところ。一般的な飲み方としてストレート、ロック、ハイボールなどが広く知られている。
ベーシックな飲み方もいいが、炭酸ではなくジンジャーエールやコーラで割ると普段とは違うテイストのハイボールが愉しめる。他にもロックが好みならばメイプルシロップを少量垂らしてみると、ほのかに甘みが加わり思いのほか愉しめるだろう。
寒い夜ならば温かい紅茶に混ぜ、ゆっくり飲めば心も体も芯から温まる。これからの季節に向け、自宅で楽しむ地ウイスキー。自分好みにアレンジして愉しんでみたい。
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