Man's craft 大人の工作。その1

在宅ワークの時間が増えた昨今、趣味に多くの時間を割く人が増えている。今月の特集は模型、木彫り、ジオラマなどの工作に嵌まる人を紹介し、その作品を拝見して、熱中する理由や面白さを探ってみた。
東京都 Randyさん
自分の想ったように作ること
こだわりを持たない模型作りが基本
父親の影響もあって、小学3年生の頃からすでに旅客機模型を製作していたといRandyさん。高校生の時には釣りに嵌はまり、社会人になって某ルアーメーカーのフィールドスタッフの仕事に就いたものの、模型作りへの思いは継続し、手を止めることはなかったという。
気がつけば、飛行機模型作りは自分の生活の一部になっていたと笑う。「模型作りは生涯の趣味とも言えますね。今は仕事がら飛行機に関わるという環境にも恵まれているため、色々なインスピレーションを受けられるのがありがたいですね」製作する上で何よりモットーとしているのが、〝自分の思ったように自由に作る〞こと。
「私は模型製作において〝こだわり〞を持たないようにしています。もちろん細かなことを挙げればそれが〝こだわり〞になるのかもしれませんが。昨今の模型雑誌では〝このキットはここが本物と違う〞〝A型にはこのパネルは存在しない〞など作ることを躊躇してしまうような記事が多いような気がします。
でも、本物の飛行機を知っている私からすると〝模型は本物〞ではないという結論にしか至らないので、細かな部分はこだわらないようにしてます」箱から出してそのまま作るStraightfrom the boxを基本にしているというが、それは、模型の設計者、メーカーコンセプトなど多くの要素が重なってモデラーのもとへ届くので、そ
の製品プロセスも大事にしたいからなのだそうだ。
「結局は作り手によって変わる部分もあるし。まぁ、プロに比べて工作技術が伴わないことへの言い訳でもありますけどね(笑)」作品の自慢すべき点を挙げてもらうと、どの作品もキャノピー(窓、風防)をピカピカに仕上げることだとか。
実際の飛行機には細かな傷が沢山あるが、模型はピカピカに輝かせた方がメリハリがつくのだ。方法はコンバウンドで磨いた後に表面にポリマー処理を施しているという。
「手を動かしながら完成を想い浮かべる時が幸せ。私は集中力がなくすぐ飽きてしまうので10個作って完成するのは4〜5個くらいなんですが、それでも出来上がりの姿を想像してニヤニヤしているのが楽しいですね。ウイスキーを飲みながらキットを眺めていて、いつの間にか朝になっていたこともしばしばです」これからはSNSなどで、飛行機模型の魅力を広げたいという。
北海道 セラ箱さん
歴史のワンシーンを想起させる
箱庭的な城郭模型の世界
安土城、姫路城、熊本城……眺めているだけで戦国武将たちの歴史の1ページを想起させ、城好きな人はもちろん、そうでない人でもワクワクと心躍る楽しい世界。
緑の木々に抱かれ、石垣や天守など細部まで精巧に作れられた城郭模型は、それぞれの歴史ストーリーまでもが再現されているように美しい。
「以前はドイツ艦や計画艦などの艦船模型が好きだったんですが、主だった船はだいたい作って満足したので、最近は、子どもの頃に好きだったお城作りにもう一度チャレンジしているところなんです」もともとジオラマやミニチュア、箱庭が好きだったと話すセラ箱さん。
子どもの頃に比べて、今はもちろん技もお金もかけることができ、じっくり城郭模型と向き合う日々が一番の楽しみになっているという。制作する上での特に好きなプロセスは、石垣と樹木を植える緑化部分。特に石垣は手間をかけて一つひとつ筆で塗って本物に近づける。
「8色くらいに色調を変え、モザイク状に塗っているんですが、ここは手間がかかる分、うまくいくととても満足感がありますね。集中していると時間が経つのもつい忘れてしまいますが」一方、緑化部分も模型用モスや木を使い、それらをどう配置するかで、全体的な表情が大きく変化する。
しかしながら、あまりリアルであることに凝りすぎないようにするのもポイントという。それは、〝模型は、あくまでもあちこち都合のいい嘘をついた箱庭世界〞であると捉えているからだそうだ。
「それ〝らしい〞模型を作りたいと思って作業をしていますが、細部にこだわりすぎると、かえって〝らしくない〞仕上がりになってしまうように思うのです。そして、作り込みすぎないことも大事。どこで作業を止めて完成とするか……その加減を探るのも作る醍醐味ですね」
出来上がりを想像しながら、そこに住んだであろう城主と歴史に思いを馳せながら黙々と手を動かす。それは何より幸せなひと時だという。「プラスチック素材のお城が、色を塗ったり、樹木を植え込んで緑化作業をすることで、本当にありそうなお城の姿になっていく。
自分の好みの箱庭世界が形になっていくのは本当に面白いですね」まだまだ作りたい城郭は色々あり、歴史を紐解きながら、その数を増やしていきたいと笑顔を見せた。
岐阜県 スティーブ青島さん
ベニヤ板の平原が
鉄道模型風景に変わっていく
主にYouTube、Twitterにて「鉄道模型ジオラマ」の「作り方や車両の改造・メンテナンス方法」など発信しているスティーブ青島さん。この空間はその撮影のためのスタジオとして、また購入した鉄道模型を走行させて遊ぶために造ったスペースだという。
「実は現在のものは三代目。初代のジオラマは土台の板がガタついたので取り壊し、二代目はYouTubeの撮影を意識して作ったのです」しかし、今度は勾配がきつすぎて列車が坂を登る速度が落ちてしまったり、カーブが連続するので脱線の原因に。「今は次のジオラマ製作に取りかかっていて、試行錯誤を繰り返しています」。
だが、基本的にはYouTubeの撮影が目的なので、カメラを置く位置などを考慮し、全体を360度どこからでも撮影・眺められるようにしている。「本来、ジオラマを作る時は建物などは土台に固定することが多いのですが、撮影の際に自由に動かせるよう固定はしていません。
また、坂道の勾配を緩やかにして、列車の走行が一定になるようにしています」実際の風景や町並みをリアルに再現するのではなく、イメージを大切にするのがポイントと言うスティーブ青島さん。
それはまた、〝誰もが簡単に作れる〞ことも意識している。具体的な構成を簡単に列挙すると、①ジオラマの広さを畳一畳半の広さにし、レールのレイアウトは複線エンドレス。レール・運転システムはTOMIXを採用。
②駅は階層駅で1階2にそれぞれホームがあり、階層駅でレールを立体交差させることで複線エンドレスを2周させている。③レイアウトの中央に車両基地を設置。TOMIXの車両基地レールセットを使って延長セットと余っていた直線レールを追加して、6両編成5本を留置することが可能。④複数レイアウトの内回りを自動運転化。
TOMIXの自動運転ユニット「TNOS」を導入し、内回りで最大4本、外回りの1本と合わせて最大5編成の列車を同時に運転させることができる。「何もなかったベニヤ板の平原が製作が進むにつれて風景に変わっていくのが楽しい。町並みや風景をリアルに再現するのは苦手なんですが、頭の中で想像したものが形になるのは、ちょっとした達成感ですね」自分で撮影したものを見てみるとそれらしい風景が画面に展開。映像製作の楽しみも堪能しているのだ。
※本記事の内容は雑誌掲載時の情報です。
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