【3大グルメ企画】 第四章「味の萬楽」編
秋葉原駅と御茶ノ水駅の中間あたりにある「味の萬楽」秋葉原駅と御茶ノ水駅の中間あたりにある「味の萬楽」はそれぞれ駅から徒歩 5 分程歩き、昌平橋交差点の角に位置している。大きな道路を挟んだ向かい側には「ぐろ亭」がある。周辺には秋葉原の電気街や神田明神があり、地元の人はもちろん、多くの人が訪れる東京のど真ん中だ。遠目から見ると赤と白の縞模様の店構えはメルヘンチック洋菓子店のようだが、明治 45(1912)年創業のラーメンと中華粥の老舗専門店だ。100 年超えの老舗店を現在切り盛りしているのが 4 代目の女将、古室さん。明治代に日本橋で開業した曽祖母から、変わらぬ味を受け継いでいる。祖母が身体をし、車いすで店に立てなくなったときに、祖母の孫にあたる古室さんが店を任されるようになった。なお古室さんの父親は神田小川町にある中華店をオープンさせ、こちらは弟が後継いでいるのだという。古室さんが店を切り盛りするようになり 15 年ほどが経ち今では近所の子どもからビジネスマン、ママさんまで店脇を通りかかる人皆が知り合いになるほど濃厚な付き合いをしている。平日 11~15 時のみ営業する創業 100 年超のラーメン・中華粥専門店大きな道路の角にあるこの店は中がオープンになっていてよく見え、初めてでも入りやすい雰囲気だ。店のインテリアや空気感は昭和レトロそのもの。カウンターがメインのこじんまりとした店内は、建物自体は歴史を感じさせるが、かなり清潔にされている。オーダーは、入口を入ってすぐ横にある現金専用の券売機で注文するスタイルだ。店外に代表的なメニューが写真付きで飾られていて明瞭簡潔。ここの代表的なメニューは中華粥としょうゆラーメン、そして季節限定でいただける冷やし中華。セットメニューはもちろん、チャーハンやアルコールメニューなどもラインナップしている。また土日祝日は店を開けておらず、平日の 11~15 時のランチタイムのみ営業をしている。4 代目女将、古室さんが一人で切り盛り厨房内はオープンキッチンで古室さんの丁寧な作業を窺える。「(おばあちゃん、ひいおばあちゃんは)料理が上手な人だったというのと、いい出会いがあったのかなって。おばあちゃんの時代は出版社さんたちもよく来ていたので」と話してくれた。古室さんが子どものころは祖母が中華料理屋を営んでいたそう。「祖母のころは夜だけ営業している期間もあって、手作りの腸詰めや中国酒でもてなしていました神田は出版社が多く、有名な作家さんたちがよく来ていました。」馳星周先生や北方健三先生などの有名作家さんや井崎脩五郎先生など著名人が足しげく通っていたのを中学生の時に記憶しているのだそう。今のラーメンと中華粥にメニューを絞ったのは祖母が病に倒れて父の代からで、華料理店から業態を変更させたのだという。古室さんが店を継いだのはその父が亡くなったタイミングだったそう。「最初は 2 人でやっていたのですがコロナで 1 人になりました。でも 1 人の方がラクですね。休まなければいけないときにすぐ休業できるので」仕込みのために平日は毎日朝 8 時に店に入り、15 時の閉店後は 18 時くらいまで次の日の仕込みや掃除をしているという。調理場横の小さな扉が開放されていて、そこから通学していく小学生たちや常連客たちに、挨拶を交わしているのが印象的。仕込みや調理をしながら、店外から常連客からの挨拶に答えるため、しばし手を休める。その頻度は 10 分に 1 回程度だから、なかなか頻回なのだ。これが日常なのだそうだが、地元の飲食店でちょっとした世間話をする様子はすっかり見かけなくなった光景でもある。この和やかなやり取りこそ、味の萬楽の魅力ともいえよう。昔懐かしいしょうゆラーメンラーメン 850 円そうこうしていくうちに、しょうゆラーメンが完成。ひとり分のスープを丼に綺麗に注いでくれる。具の乗せ方も均一でとても美しい。ラーメンは、よくある昔懐かしいしょうゆラーメンで、少し黒く染まったスープが特徴的。スープを口に運んでみると、鶏ガラベースの昔ながらの中華そばの味わいが口いっぱいに広がる。サッパリとした後味なのに独特のコクを感じられた。麺は、若干硬めでコシがあり食べ応えがある。食べやすいサイズにカットされたチャーシューは、とろけるほど絶品。ここのチャーシューを目当てにしている人も多いのだそうだが、これは納得できる。脂の臭みがないのは丁寧な仕込み故だろう。十分な量のメンマと香ばしい海苔。薬味の葱も少し多めと嬉しいバランスまで完璧。特別なものは入っておらず、ここまでオーソドックスでありながら、美味しい、また食べたいと思わせる昔懐かしいラーメンがここにある。丁寧な仕込みや火加減、盛り付けまでのこだわりが多くの人々から愛され続ける理由であり、これからもさらに多くのファンを惹きつけていくのだろう。元・中華料理店の祖母から受け継いだおかゆ小おかゆ 500 円お粥もいただこう。お粥はとてもシンプルに見えるが中華出汁の味がついている。「しっかりめに味がついているので、そのままでも美味しいですよ」と古室さん。こだわりはお粥を 3 回に分けて炊いていること。食感の違いを出しているのだそう。このレシピは、代々受け継がれてきたもので大きく変更しておらず、老舗の味を守り続けている。なお、お粥にトッピングされているのは、ワンタンの皮を揚げたもの。香ばしくて、食感も良い。シンプルでそれだけでも美味しさを堪能できるが、お粥とともに差し出される「味変調味料」で好みの味にアレンジしてみても。豆腐を発酵させたふにゅうやチリソースなどを入れるのもおすすめとのこと。また、卓上に常備されている「辣油」も、お粥によく合う。シンプルな味わいのお粥が、各調味料を吸い込んで、それぞれの味わいを引き立てていく。一番嬉しかったことを聞いてみると、「私に代わってからずっと来てくれているお客様がいるわけですが、『味がよくなったね』と言われるのは嬉しいです。始めたばかりでまだまだのころからずっと通ってきてくれる人もいらっしゃるので」辛かったことは「ちゃんとできないことです。思っているよりもできないときは自分の無力さを感じますね。数字は嘘をつかないのでバロメーターにはなる」3 月から提供される期間限定冷やし中華冷やし中華 1,300 円季節限定の冷やし中華も必食。初夏を告げる風物詩として中華屋等で見かける「冷やし中華はじめました」の看板だが、ここの冷やし中華は 3 月からはじまっているという。「冷やし中華がコンビニで売れるのは 4 月、3 月だとデータを持ってきてくれるお客さまがいて。早ければ早い方がいいと教えてくれたんです。実際、お客さまも早い時期から出してほしいようだったみたいでね」お客さんの希望で年々提供時期が早まっていたが、3 月から冷やし中華を提供するようになったのは 2021 年からだという。ここの冷やし中華は具沢山の酢醤油タイプ。お酢が甘めなのが特徴で、これは父親好みのレシピで譲り受けたものなのだそう。なるほど、食べてもツンとくるような冷やし中華特有の酸味は控えめで甘みを強く感じた。冷たく締められた中細のちぢれ麺はぷりっぷり。タレはサラッとしているけどちぢれた部分によく絡む。具材もきゅうりやチャーシュー、錦糸卵にアクセントの紅生姜もクセになる味で、どれもバランスがよく、あっという間に汁まで食べ切ってしまった。酸っぱくて冷やし中華を食べてこなかった人にこそ食べて欲しい 1 杯だと感じる。4 代目女将の夢「ヨボヨボになるまで働き続けること」一番人気のセットメニュー「ラーメンと小がゆセット」1,350 円この店の一番人気のセットメニューは「ラーメンと小がゆセット」1,350 円。このほか今あるおかゆメニューは「チャーシューおかゆ」「海鮮おかゆ」「とりおかゆ」「ピータンおかゆ」で各 1,000 円。ベーシックなおかゆはラーメンとセットで頼むか「小おかゆ」500円でいただくことができる。なお、以前は朝の時間帯に中華粥を提供していたがやめてしまったそう。「体力的なものを感じてね。そして、長くこのお店を続けるために、朝粥はやめたんです。」そんな古室さんの今後の夢は「ヨボヨボになるまでここで働き続けること」健康に気を付けながら一人で切り盛りしている以上、自分自身の身体が何よりも大切だ。店に立てなくなったらそれで店をたたむことになることがわかっているからこそ、ランチタイムのみで、ある限りの接客を続けている。暖かみのある女将との何気ない会話も楽しめて、折り紙つきの昔ながらのラーメンや、ほかでは味わえない中華粥を食しに是非、一度訪れてみては。Shop data味の萬楽東京都千代田区外神田 2-3-9電話/03-3251-0213営業時間/11:00~15:00定休日/土・日・祝アクセス/東京メトロ丸ノ内線 淡路町駅 徒歩 4 分/都営新宿線 小川町駅 徒歩 4 分/東京メトロ千代田線 新御茶ノ水駅 徒歩 5 分------------------------------------------------------「藤井21プロフィール」 埼玉県東松山市出身で同市の観光親善大使「東松山市應援団 」にも任命されている。 実家は酒販店で学生時代から15年以上続けた飲食店勤務の経験を活かし、料理芸人としてバラエティ番組やラジオ等に出演し、レシピサイトクックパッドには自信が考案した1900以上のレシピを公開している。 またYoutube「藤井21チャンネル」では趣味の呑み歩き動画や旅画を投稿し2万3千人のチャンネル登録者がいる。 そして2025年より唎酒師を運営する団体SSI日本酒サービス研究会に就職し“兼業サラリーマン”として働いている。 料理芸人、Youtuber、観光親善大使、会社員とマルチに活躍する。
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